知識を求めし者

 アースガルドの中央に広がる平野グラズヘイム。そこに並ぶ神々の住居の中でも、アース神族の王オーディンの館ヴァラスキャルフは際立って荘厳な佇まいをしていた。

「何……イミルの子孫が?」

 オーディンはヴァラスキャルフの高座に座り、ミッドガルドへの旅から戻ってきた一人のアース神の言葉に耳を傾けていた。

「ええ、見た限り私たちと同じアース神でも、人間でも妖精でもない。だとすればあれはイミルの一族……霜の巨人の生き残りでしょう」

 女神の顔は喜ばしくない事態に翳っている。報告を聞いたオーディンも、自然と険しい表情になっていた。

「やはり、ノルニルの言っていたことは真実だったか。どう思う? ラウフェイ」

 オーディンは様々な思考を巡らせながら、銀髪のアース神――ラウフェイを見る。

「霜の巨人族は、始祖であるイミルを殺したオーディン達と、オーディンを王と認めたアース神を滅ぼしたい、と考えているでしょうね。攻め込んでくるのは時間の問題かと」

 ラウフェイの推測にオーディンの表情がますます険しくなる。神々の中で最高の賢者とされているラウフェイ、故に頭脳面でオーディンが最も頼るのは彼女だった。
 彼女も自分と同じように考えているのであれば、ますます生き残った巨人族を放っておくわけにはいかない。

(霜の巨人、か……)

 オーディンは立ち上がり、ラウフェイに向かって問いかける。

「ラウフェイ。霜の巨人が住む地に行き、生きて帰れると思うか?」
「何を考えているのですか! あなたがヨトゥンヘイムに行けばたちまち巨人に狙われることに」
「わかっている」

 頷いたオーディンだが、その目に宿った決意は僅かな揺らぎも見られない。

「我々と同じように、霜の巨人も何らかのかたちで様々な知恵を蓄えているはずだ。アースガルドとミッドガルドを……世界を護るために、それを利用しない手は無い」

 霜の巨人は神とは全く違う環境で暮らし、そして全く違う文化を築きあげているはず。オーディンはそう考えた。
 彼らの持つ知識や魔術を手に入れることができれば、神々の持つ知恵を広げることができる。そうすれば巨人――それだけでなくもっと他の敵の撃退もたやすくなるだろう。

「しかし……」

 ラウフェイは頭を振る。確かにオーディンの言葉には一理ある。だが、あまりにも危険すぎる。
 生命を危険にさらしてまでヨトゥンヘイムに赴き、もしも収穫が無かったら無駄骨だ。最悪、命を落とす可能性も考えられる。しかし、それでもオーディンは断固として譲らなかった。

「冥府に行き、手に入れたルーンだけでは足りんのだ。もっとあらゆる知識を取り込まねば、世界を守ることなど到底できぬ。知識を手に入れるためならば、いかなる危険であろうと切り抜けてみせる」

 オーディンの意志はかたく、その決意が変わることは無いだろう。それはラウフェイにも充分に伝わっていた。

「あなたは言い出すと止まりませんからね……わかりました」

 そう言ってラウフェイはただし、と付け足す。

「私も、護衛として同行させていただきます。一人で行くよりもいくらかは安全でしょうから」

 その翌日、オーディンとラウフェイは多くの神々に見守られて出立の時を迎えた。

「あなた、必ず戻ってきてください。この子達のためにも……」
「心配するな、フリッグ。お前がアースガルドで待っていてくれる限り、わたしは必ずここに戻って来よう」

 沈んだ表情で自分を見つめている女神――フリッグに、オーディンは言い聞かせる。彼女はオーディンの妻だ。フリッグの腕には、オーディンとの間に生まれた二人の息子が抱かれていた。

「俺も行くぞ、オーディン! 俺にかかれば巨人どもなんか一捻りだ!」

 馬上のオーディンを見上げ、トールは声を大にして叫ぶ。オーディンがヨトゥンヘイムへ行くと聞き、トールは自分も行くと言っていた。しかし、

「ならん。わたしのいない間、お前の他にアースガルドを誰が守るのだ?」

 そう言ってオーディンは首を縦には振らなかった。
 決して多くはないアースガルドの住人、その中でまともな戦力と言えるのはオーディンとその弟のヴィリ、そしてトールだけだった。
 戦えるとは言っても、ヴィリにはオーディンのような技も、トールのような力も無い。トールとオーディンが不在になれば、決定打を欠いたアースガルドの防衛力は砂の城に等しい。万が一、巨人が大挙して攻めてきた場合、アースガルドの陥落は目に見えている。無論、トールもそれがわからないわけではなかった。

「でも……それでオーディン達が巨人に捕まっちまったらどうするんだ?」
「平気へ〜き! このオレがついててやるんだ、絶対に死なせたりはしねぇよ」

 不安そうなトールにそう言うのはムニン。彼を肩にのせたオーディンは自信をもって頷く。

「なに、ラウフェイの知恵と、ムニンの目があればなんとでもなる。……行くぞ、ラウフェイ」

 オーディンの呼びかけにラウフェイは頷く。不安げな神々を背に、二人はアースガルドを発った。

「ふむ……ミッドガルドも随分と栄えているな」

 緑に覆われた大地を見渡し、オーディンは満足げに呟いた。兄弟たちと共に創りあげた世界。数本の木があるだけに過ぎなかった荒地も、今では草木の広がる草原に変わっている。

(わたし達の手で創った世界だ、巨人などに渡せるものか)

 去来した思いにオーディンは手綱を一層強く握る。

 それは、必ず世界を護り抜いてみせるという彼の決意の表れでもあった。

「――見えてきましたよ」

 馬を繰りながら、ラウフェイは前方に広がる森を指して呟いた。遠目からも、ミッドガルドには不釣合いな不気味さを帯びているのがわかる。二人が乗る馬達も、やはり森の異様な雰囲気に怯えていた。彼らを連れて森に入るのはまず無理だろう。そう考えてオーディンは馬の背から降りた。

「この森がミッドガルドとヨトゥンヘイムの境界線と思われます。人間たちは鉄の森、『ヤルンヴィド』と呼んでいるようですが……」
「そのようなことはどうでもよい」

 オーディンは足早にヤルンヴィドへ入ろうとする。それを引き止めたのは――

「――!?」

 ラウフェイでもムニンでもなく、オーディン自身の本能だった。森へ入ろうとした瞬間、恐ろしいほどの悪寒が背筋を伝い、入ってはならないと第六感が警告する。

「ヤルンヴィドには、私も一度入ってみようとしました。しかし、巨人の血を受けた魔狼と呼ばれる狼が棲みついていて、すぐに襲い掛かってくるのです」

 背後からかかるラウフェイの声を聞きながらオーディンは剣を抜き放つ。その行動を予想していたラウフェイは、同じように槍を右手に握った。振り返らずにオーディンは言う。

「邪魔者がいるのならば――」
「強行突破、ですね!」

 二人の表情が引き締まる。次の瞬間には、オーディン達はヤルンヴィド向かって走り出していた。
 森へ入った途端、オーディンの視界は闇に覆われる。うっそうと生い茂っている木々はほとんどの日光を遮っていた。木々の陰、暗闇の中に、押し殺した気配を感じる。

「来たぜ――右に二つ、左に一つ!」

 兄のフギンと共に世界の偵察を任されているムニンの洞察力は並ではない。
 基本的に鳥は暗闇では目が利かない生物だが、ユグドラシルの恩恵を受けていたムニンとフギンは例外である。ムニンはその能力を以て、瞬時に暗がりの中からオーディンらを狙う敵を見出した。
 オーディンは右手の繁みに向かって剣を横薙ぎに振り、ラウフェイは左手の暗闇に槍を突き出す。肉を裂き、貫いた確かな手ごたえがそれぞれの武器を伝い、獣の悲鳴があがった。
 だが、数では圧倒的に敵のほうが有利だった。瞬く間に二人の周囲を無数の、しかも一匹二匹とは数えがたい巨躯の狼の群れが覆い尽くす。オーディンとラウフェイは互いの背中を合わせた形で魔狼に囲まれる。しかしオーディンは冷静さを失わなかった。

「ムニン、突破口を見つけて来い」
「あいよっ! オレが戻ってくるまで、二人とも生きていろよな!」

 命じられたムニンはオーディンの肩より離れ、狼たちの頭上を越えて闇の中へ消えていく。しかし、魔狼はムニンには見向きもせず、オーディン達を睨みつけている。それは彼らが何を糧として食らっているのかを如実に物語っていた。

「あの子が戻ってくるまで、持つでしょうか?」

 ラウフェイはやや不安げに槍を握る。

「必ず持つ。……いや、持たせてみせる!」

 襲いかかってきた狼を切り捨てながらオーディン。ラウフェイもまた前方に槍を突き出し、狼の眉間を的確に貫いた。二人の尋常ならざる抵抗に、魔狼の包囲網はやや遠まきになる。

「こいつら、人間にしては妙に強いぞ……」
「神とかいう連中か!?」
「まさか、我らの地を侵略しに来た?」

 魔狼が人語を解したことに、オーディンはやや戸惑う。

「なるほど、巨人の血を受け継ぐ狼、人語を話せても無理はありませんね…」

 ラウフェイは槍の穂先の紅い露をはらい、オーディンを、そして自らを叱咤するように苦笑した。

「殺せ! 我々の領地を侵す神を!」

 魔狼たちは一斉にオーディンとラウフェイめがけて飛びかかった。オーディンは、がむしゃらに剣を振るう。視界のほぼ七割が狼で埋め尽くされ、狙わずとも命中するからだ。

「二人とも、こっちだ!」

 魔狼の包囲網の外からオーディン達を呼ぶ声が響く。ムニンの声だ。
 ラウフェイは素早く飛びかかってきた一頭の口腔を突き、その巨躯を周囲の魔狼めがけて投げつけた。その間にオーディンは魔狼の壁を打ち破る。側に転がっていた魔狼の骸を掴み、追撃にかかろうとする魔狼向けて思いきり投げつけた。
 魔狼たちが視界を遮られて混乱に陥っている隙に、二人は森の闇の中へと溶け込んでいった。

 突如とした光の出現に、オーディンは目を細めた。ラウフェイは光源を確かめようと、慎重な足取りで前に進み出る。

「そこまで警戒しなくとも良い。お前たちに危害を加えても何の得にもならんからな」

 まるで、そこだけヤルンヴィドの闇が取り払われたかのように、柔らかい太陽の光が注いでいた。光の穴の中央には清らかな水を湛えた泉が湧き、その傍らに一人の男が腰かけている。

「巨人か?」

 ラウフェイは緊張した面持ちで男に問いかける。油断なく向けられている槍にまったく臆せず、男は知性を漂わせる顔に笑みを浮かべた。

「愚問、そなたはこのヤルンヴィドに人間がいるとでも言うのかね?」
「ならば……やはり霜の巨人か」

 オーディンは呟く。巨人の男はあっさりと頷いた。

「我が名はミーミル。主らは人ではないようだが?」

 二人は答えなかった。ミーミルと名乗るこの男が巨人である以上、アース神だと知られればどうなるか――オーディンとラウフェイには予測できていた。槍を構えたままのラウフェイの背後で、オーディンは剣を二、三度握りなおす。それを見たミーミルは、両目を細め呟いた。

「ほう、『神々の父』は随分と短気なのだな」

 さらりと出てきた言葉に、二人は息を呑んだ。ミーミルというこの男は、目の前にいる二人が神であることを、しかもそのうちの一人がオーディンであると見抜いていたのだから。ラウフェイの顔に浮かんでいた緊張と警戒は更に濃いものとなる。

「だとしたら、どうするつもりですか? 先ほどの狼たちのように私たちを殺すとでも?」

 ラウフェイの言葉に、ミーミルは哄笑で応えた。

「そうしたところで私に何の利益がある。最も、力ではお前たちに及ばぬということもあるがな」
「『力では』?」

 含みのあるような言葉に、二人は眉根を寄せる。ミーミルはオーディンの呟きに感心したような顔で頷いた。

「ふむ、試してみた甲斐はあったというわけだ」

 笑うミーミルを一瞥し、ラウフェイはその傍らの泉を覗き込んだ。
 泉の湛える水は不思議な力を帯びているように見える。ミーミルは泉をじっと凝視したままのラウフェイを横目で見ながら、懐に手を入れた。

「その泉が、気になるかな?」

 そう言って角杯を取り出し、ミーミルは泉からすくいとった水を口にした。オーディンは進み出て、泉を見下ろしながらミーミルに問う。

「この泉には、一体どのような力があるのだ?」

 訊かれたミーミルは泉の底を指した。

「水底に横たわる太い根が見えるか? あれは世界樹の根だ。世界樹の霊力を受けて、ここの水は魔力を帯びているのだ。この水を一口でも飲めば、ありとあらゆる知識、そして知恵を与える。他の者は『ミーミルの泉』と呼んでいるらしいがね」

 知識と、それを使いこなす知恵。ミーミルの泉がもたらすものは、まさしくオーディンの求めているものだった。身を乗り出すようにして、オーディンはミーミルに歩み寄る。

「その泉の水、わたしにも飲ませてもらえないか?」

 ミーミルはオーディンを見下すように、鼻を鳴らす。

「そう言ってくる者は後を絶たん。しかし、頼まれてはいそうですかと飲ませるわけにはいかんな……」

 ミーミルは巨人族。神であるオーディンの要求に素直に従う義理は無いのだから、当然の反応とも言える。だが、ミーミルが水を飲ませるのを渋る理由は別にあった。
 世界樹の霊力を溜め込んだ水がもたらす知識と知恵は半端なものではない。下手をすれば正気を失ってしまうほどの効力を持つ霊水は、強靭な精神力までは与えてはくれない。それは、泉の力を授かる者自身に要求されるのだ。

「この泉の水を飲み、その力を手に入れたのはごく僅かな、一握りの者のみ。私を除けばヴァフスルードニル、そしてファールバウティの二人しかおらんのだ。
 知恵を欲するあまりに狂うなど愚行の極みよ。主もそれがわからぬほど愚かではあるまい? 神々のねぐらに戻って蜜酒でも飲んでいればよかろう」

 オーディンはミーミルの喉元に剣先を突きつけた。ミーミルはゆっくりとオーディンを見上げる。

「……これは何のつもりかな?」
「どうしても水を飲ませぬと言うならば、その首と胴が離れることになるぞ」

 脅すようなオーディンの声色にも、ミーミルは恐れを見せなかった。怯えるどころか、可笑しげに口元を歪める。

「残念ながら、私の許可が無ければここの水は飲めんのだよ。泉の水を飲むには特別な角杯が必要なのだ」

 ミーミルの言葉を聞きつつ、オーディンは彼の右手に視線を運ぶ。そこには先ほどミーミルが泉の水を口にする際に使用した角杯があった。

「そうか。ならばお前を殺した後でその角杯を頂くとする」
「剣をおさめよ。私を冥府へ送ると申すのなら、それが喉を裂く前にこれを砕くぞ」

 言うと、ミーミルは角杯を握っている右の手に力を込める。これでは、ミーミルの命が絶えるよりも先に、角杯は確実に砕けてしまうだろう。オーディンは無表情で、ミーミルは笑みを浮かべながらもやや緊張した面持ちで、互いに睨みあっていた。

「もうやめましょう。この者に脅しは通用しません」

 二人の間に割って入ったのはラウフェイ。オーディンは剣を下ろしながらも苦い顔でラウフェイを見返す。

「ならば、どうしろと言うのだ? 巨人に頭を下げて頼み込むのか?」

 オーディンに軽く頷き返し、ラウフェイはミーミルに向き直った。

「ミーミル、この『フィヨルスヴィズ』は知恵に翻弄されるほど愚かな者ではありません。その水を飲ませていただければ、私たちは速やかにここを立ち去りましょう。それでも……その泉の水を与えてはくれないのですか?」

 オーディンを指して偽名で呼ぶ点では、さすがにラウフェイは抜け目がなかった。もし「オーディンがやって来た」と声高に報じられれば、ヨトゥンヘイムからの脱出は困難を極めるに違いない。
 ミーミルは首を横に振る。

「狂わぬ、という保証がどこにある? かような経験はしたいものではないのでな」
「お願いします。あなたの望む、如何様な代償も払いましょう」

 ラウフェイは退かなかった。ミーミルの泉の水を、オーディンが口にすることができるのならどんな要求も呑むつもりだった――泉の水を飲まない限り、オーディンは帰ろうとしないだろうから。

「どのような代償も、だと?」

 ミーミルは片眉をあげ、ラウフェイの言葉を繰り返す。ラウフェイは真摯な表情で頷いた。

「その男……神々の王のために、か。見上げた精神ではあるな」

 ある意味半ば呆れている、とも言える顔でミーミルはラウフェイを見上げた。

「なら――そうだな。お前の眼と引き換えに、飲ませてやろう」

 ミーミルは言った。ラウフェイではなく、その背後のオーディンに目を向けながら。

「わたしの……だと!?」
「そうとも。水を口にするのはこの女ではなくお前であろう? ならばその代償はお前が払うのが妥当というものだ」

 オーディンは歯噛みしながらも、我が身を以て代償を払うべきか黙考する。その間、ラウフェイはミーミルを説得しようと試みていた。

(このままでは、埒があかぬ)

 二人の背後で、オーディンは唐突に剣を振り上げた。そしてその切っ先を自らの右目に突き刺す。

「オーディン!?」

 ラウフェイが(驚愕のあまり、偽名で呼ぶことも忘れて)叫んだ時には、すでにオーディンは右の目玉を抜き取っていた。顔面の右半分を赤に染めながらそれを手のひらに乗せて、ミーミルの前に進み出る。

「さあ、これでよいのだろう? 泉の水を飲ませてくれ」

 ミーミルは無言のまま、泉の水を汲み取った角杯をオーディンに手渡す。オーディンはそれを飲み干すと、小さな驚愕のうめきを漏らした。
 それまで頭の中に雑然と存在していただけのあらゆるものが、素晴らしいまでに整理されていく。眩暈にも似た感覚が消えた時、オーディンの精神は途方もない知恵を手に入れていた。どのような知識も使いこなすことができるという確信さえ、抱かせるほどの。

「これは……素晴らしい」
「どうやら、大丈夫のようだな」

 表情を変えないままミーミルは呟く。それまで様子を見ていたムニンは、オーディンの肩にとまり溜息をついた。

「これでもう満足だろ。ヨトゥンヘイムなんてこんな辛気くさいトコ、さっさと離れようぜ」
「いや、もう少し行ってみるとしよう」

 オーディンの返答にムニンは羽をはためかせる。

「なんだとぉっ!? まだ帰らねぇって言うのかよ。無理はやめたほうがいいぜ」
「引き際はわきまえているつもりだ。それにお前やラウフェイもいるだろう、大丈夫だ。……ミーミルよ。お主のように、特別な知恵を持つ者を知らぬか?」

 ミーミルは森の奥――オーディン達がやって来たのとは反対の方向――を指差した。

「ここをまっすぐ抜けたところに、フレーバルズという男が住んでおる。奴を訪ねてみるといい」

 オーディン達は歩き出した。さらなる知恵を求めるために。