フレースヴェルグの正体(+オマケ)

 ブログからの焼き直し版。北欧神話に登場する大鷲フレースヴェルグに関してのネタぷらすあるふぁ。


 とりあえずはフレースヴェルグに関する情報のまとめから。この大鷲の名はヴァフスルードニルの歌にのみ現れます。

天の一角にとまり
鷲の姿をとる巨人の名を
フレースヴェルグという
その翼より風起りて
すべての人々の上にいたるという

(ヴァフスルーズニルの歌、「ギュルヴィたぶらかし」内での引用)

 上記の記述から正体は巨人であり、そして風の発生源であるということが読み取れます。また、その名は「死体を飲み込む者」という意味を持っています。
 そういえば世界樹にとまってるとか書いてないや、と思い調べてみたところ、以下の記述がありました。

 トネリコの枝には一羽の鷲がとまっていて、これが何でもよく知っているのだ。そしてその両眼の間には、ヴェズルフェルニルという鷲がとまっている。ラタトスクという<栗鼠がトネリコをかけ上ったり、かけおりたりして、鷲とニドヘグの間を、悪口を運んで上下する。

(ギュルヴィたぶらかし)

 こちらの鷲がフレースヴェルグを指しているのかどうかは明確になっていません。が、居場所が「天の一角」と「ユグドラシルの枝=高所」と似通っていること、名を持つ鷲が(おそらく)フレースヴェルグぐらいしか見当たらないことから、同一視されるようになったのでしょう。

 ウィキってみたら、巫女の予言に登場する鷲もフレースヴェルグではないかという解釈もあるらしいです。

 フリュムは東から馳せきたり、盾をかざし、巨大な魔物は激怒して身をくねらせる。大蛇は波を打ち寄せ、鷲は鋭い叫びを発し、蒼白い嘴で死者を引き裂く。ナグルファルは岸を離れる。

(巫女の予言)

死体を飲み込む者とは

 それでは、大鷲フレースヴェルグとは何者なのか? その前に巨人族について少し触れてみます。

 巨人族の祖先であるイミルは、太古に発生した霜の塊から産まれました。そのため子孫である巨人達も「霜の巨人」などと呼ばれます。人の命さえ奪う冬の寒さの象徴、それが巨人なのです。フレスヴェルグもまた例外ではないはず。

 霜の巨人族、天の一角という居場所、風を起こす力、名前の意味。これらから連想できるのは、吹雪でしょう。天にいるというのは天候と関係していそうですし、吹雪と言えば強烈な風と雪がつきものです。
 「死体を飲み込む」という名は、寒さに倒れた者の死体が雪に埋まってしまう様から連想したのではないでしょうか。

 鷲の姿をとっているのは、鳥の羽ばたく動作が風を起こしているように見えたり、風に乗って舞う雪を羽毛に見立てたのではないかと思われます。
 また、巨人族が鷲に変身するのは彼だけでなく、イズンを攫ったスィアチや詩の蜜酒を隠したスットゥングなどがいます。
 死肉を食べる烏がオーディンの使いとされるように、鷲も何らかの形で死と結び付けられたのでしょうか。鷲が家畜を襲ったりして、生活を脅かしていたからとか?
 そうして、巨人族が姿を変えたものとして考えられるようになったのかもしれません。

 世界樹にいる鷲に関しても考えてみましょう。この鷲もまたフレースヴェルグとした場合、ニドヘグと仲が悪いというのも頷けます。吹雪が吹き荒れる冬などは、爬虫類の蛇は冬眠の時期ですから。
 ニドヘグの名は「怒りに燃えてうずくまる者」という意味らしいですが、とぐろを巻いている姿をそのまま表しているようにも思えます。昔の人は冬眠中の蛇を偶然見つけたりして、吹雪と仲の悪い蛇を想像したのかもしれません。

 ラタトスクは……うーんわからない。ちょっと調べたところ、ノルウェーあたりの北欧圏には北リスというリスが生息しているらしいです。(ウィキペディア:北リス
 樹上で生活し、食物を地中に埋める習性があるそうです。冬眠もしないらしいので、年中樹の上と地面を走り回っている様子を見て想像を巡らせていたのかも?

もしかしてあの術は……

 ※ここからはフレースヴェルグとは一切関係ない話です。

 神々だけでなく、巨人族も魔法のようなものを使います。代表的なところを挙げれば、幻でトールを惑わしたウートガルザ・ロキでしょう。

 特に名前も無く詳細も不明なのですが、そんな魔法の一種として物をくっつけちゃう術があります。使ったのはスィアチとゲイルロズ。偶然か意図的か、どちらもロキに対して使われています。
 このトリモチみたいな術を使って、スィアチはロキを引きずり回してイズン誘拐の手引きをする誓いを立てさせ、ゲイルロズは鷹に化けたロキを捕えました。

 先述した霜の巨人族の由来を書いていて、ふと思いました。もしかしてトリモチの術は、氷に触るとひっついてしまうあの現象なのだろうか……?

参考:氷にさわるとどうして指がくっつくの

2014/04/20